「経皮毒」が怖い人にささげるコラム④。経皮毒の研究論文を探してみた話。
こんにちは。
子供たちのアレルギーが食事で治りました!
いまも三人育児に奮闘中の佐々木愛です。
(日東書院本社 (2005/2/1)竹内 久米司、稲津 教久)
①『経皮毒』読後感を語ってみた
②なんで人々がこの本にやられちやうか考えてみた話。
③「経皮毒の部位別吸収率」という妄想の出所についての話。
④経皮毒の研究論文を探してみた話。
この本のおかしさと、この本に振り回される弊害について、続けます。
さて、SNSなどを見ていると、ある情報に触れ「これ、ホントかな」と首をかしげること、ありますよね。
そんなとき、情報の真の姿を知るために、お勧めなのが論文検索サイトです。
もっともポピュラーなサイトが「グーグルスカラー」。
これは、簡単に言うと、研究界のAmazonとか楽天の書籍検索みたいなもの。
ここでキーワード検索して、上がってきた結果を眺めていると、今、そのトピックが、そのジャンルでどのような扱いを受け、どんなホットな研究がおこなわれているか、ざっくり知ることができます。
では、問題のワードを検索してみましょう。
はい、こんな感じです。
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「経皮毒」という言葉を冠した論文はヒットしません。
つまり「経皮毒」は研究されたことがないし、研究している人もいないということです。
参考までに、「経皮毒性」で検索すると、たくさんの文献がヒットします。
『経皮毒』が出版される2005年より前から、いろんな物質の「経皮毒性」が研究されていますね。
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なぜなら、「経皮毒性」は、「経皮毒」とは違い、学術用語。
ある化学物質を、製品、また商品としようとするとき、安全性の確保のために「経皮毒性」の有無や程度を明らかにすることは、重要だからです。
生活用品を扱うメーカーも、それぞれ独自の研究機関を抱えていて、そこで厳しい安全性チェックを潜り抜けたものを、商品として売り出します。あとで消費者の健康被害などが明らかになったら、メーカーは多大なイメージダウンを受け、莫大な補償金を払わなければならなりませんから。
だから、たとえば洗剤の経皮毒性についても、膨大な先行研究がありますが、『経皮毒』著者は、こういった先行研究を無視した形で『経皮毒』を書いているのです。
余談ですが、
試しに、日本語文献に強い論文検索サイト「サイニ―」でも、「経皮毒」を検索してみました。
すると・・・。
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・・・ん?
あっ。「経皮毒」を扱った論文がある!
・・・しかし、読んでみて納得。
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『中国における洗剤のリスク情報に関するフロー分析』大矢 勝, 宋 亮(繊維製品消費科学/56 巻 (2015) 1 号)
この論文は、洗剤についての研究の権威、横浜国立大学の大矢勝先生の書かれたもの。
内容は、「経皮毒」を含めた「不適切な情報」「非科学的な情報」がどのように社会に伝播するかについての調査論文でした。
つまり、皮肉にも「経皮毒」は、この論文において「不適切な情報」扱いで学術的トピックとなったわけです。
ちなみに、この大矢先生は、このような、消費者に寄り添った研究を熱心にされています。
上の論文も読みごたえがありますし、
特に「経皮毒」と、それが広まる社会の問題について掘り下げた読み物がこちらです。
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『安全性・環境問題に関する消費者情報の課題―2.5 次情報中の誤情報に対応するために―』
(大矢 勝 シリーズ くらしの最前線2010 年 61 巻 8 号 p. 511-516)
ダウンロードできますので、是非ご一読ください。
真に消費者のことを考える研究者が書いた文章というのは、こういうものだと思います。