「アトピーには脱保湿がよい」の根拠が見つからない話。その②(終)
こんにちは。
子供たちのアレルギーが食事で治りました!
いまも三人育児に奮闘中の佐々木愛です。
前回の続き。
さて、当サイトでは、脱ステはもちろん、脱保湿には同意していないのだけど、
当サイトに相談に来る方で、とくに乳児や幼児の脱保湿を強引にやっている方はけっこう多い。
どうにも、「脱保湿は自然な、最上のアプローチだ」というイメージが強いようで、大変な状態になった子供を前にしても、かたくなだ。
しかし、その根拠を聞いても、インスタで読んだ、誰かが言っていた、などの、不確かな答えしか返ってこない。
今回、いい機会なのでそれを調べてみた。
すると、
どうやら、脱ステ派のリーダーのひとり・佐藤健二先生が、1996年に『皮膚』38巻4号に掲載した、
「重症成人型アトピー性皮膚炎患者のステロイド外用剤離脱」
という論文が「アトピーにはとにかく脱保湿」論のよりどころらしいことがわかった。
もう一人の脱ステ派のリーダー・藤澤重樹先生が、この論文を脱保湿支持のよりどころにしているので、多分これが元なんだと思う。
(↑私がプリントアウトしたもの。ググれば誰でも読めるよ!)
けれど、読んでみたところ、
この論文で研究の対象とされたのは、
「重症のアトピー性皮膚炎と診断された12歳以上の患者のうち、ステロイド外用薬を中止したいと希望した患者28例」だ。
つまり、この患者さんたちはそもそも、
・当時すでに重傷で、
・ステロイドに辞めたいと希望した=おそらく、ランクアップしたり、効かなくなったりして、ステロイドに不信感を募らせていた
と推測される。
というのは、この論文が発表された90年代と言えば、ステロイドバッシングの真っただ中なのだ。
その状況に至ったのは、こう言っちゃなんだけど、70年代からのアトピーの急増や低年齢化や重症化に対応できず、ただただステロイドを出し続けた当時の皮膚科の無策のせいといわざるをえない、のだけど、
それはいまはいいとして、
つまり、言ってしまえばその実験の対象となった28例の患者は、ステロイドや保湿剤の「乱用者」だったと推察されるのだ。
ステロイド万能を押し通そうとした時代の犠牲者と言ってもいい。
また、この患者たちはステロイドと保湿剤を中止した結果、悪化した後に軽快しているが、完治したわけではなく、中止前の二割程度の皮疹は残ったとされている。
つまりこの実験で明らかになったのは、
「ステロイドや保湿剤の乱用はアトピーの重症化に関与しうる」ということにすぎないのではないか。
この論文しか、脱保湿肯定の根拠がないのであれば、乳児や幼児の未熟な肌の荒れが脱保湿で治るというのは論理の飛躍というものだ。
私なら自分の子供(軽症アトピーもち)を治すために脱保湿をしようとは思わない。
だって私の子供は、
・12歳以上ではないし、
・重症患者ではないし、
・ステロイドや保湿剤の乱用者ではない、から。
同じ条件でないと同じ結果は望めないし、
そもそも脱保湿を徹底したところで完治はしないと実験でわかっているのだから。
また、乳児や幼児の肌を荒れた状態で放っておくと、バリアー機能の失われた皮膚からアレルゲンとなりえる物質が入り込んでしまい、のちのちアレルギー体質になりやすいということも、近年わかってきたわけで(けい皮感作という)、
そのリスクを上回るメリットが、脱保湿にあるとは私には思えない。
・・・とはいえ、これは、私がほんの数時間調べてえた情報でしかないので、もっとしっかり調べれば、もっとしっかりした「アトピーには脱保湿がいい」根拠があるのかもしれない。
「自分は、個人的な経験からの確信以上の根拠があって脱保湿をやっている」
これを読んでいる脱保湿派の方で、そういうかたがいらっしゃったら、私も本当に聞きたいので、ぜひ、教えてほしいと思う。
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